キトラ古墳

キトラ古墳は、高松塚古墳に続き日本で2番目に発見された大陸風の壁画古墳です。檜前の集落を越えて阿部山に向かう山の中腹にあります。二段築成の円墳で、上段が直径9.4m、テラス状の下段が直径13.8m、高さは上段・下段あわせて4mを少し超えると推測されています。
名前の由来は、中を覗くと亀と虎の壁画が見えたため「亀虎古墳」と呼ばれたという説、古墳の南側の地名「小字北浦」がなまって「キトラ」になったという説、またキトラ古墳が明日香村阿部山集落の北西方向にあるため四神のうち北をつかさどる亀(玄武)と西をつかさどる虎(白虎) から「亀虎」と呼ばれていたという説など、いろいろな説があります。
1983年11月7日に石室内の彩色壁画のひとつである玄武が発見されて、世間や学会から注目を集めました。2000(平成12)年には国指定史跡に指定され、続いて特別史跡に指定されました。 石室の天井には本格的天文図が、壁には四つの方位を守る神とされる四神や十二支の美しい絵が描かれています。国営飛鳥歴史公園内キトラ古墳周辺地区の南に位置しています。

キトラ古墳

造られた時代は?

7世紀末~8世紀初め頃に造られたと推測されています。古墳時代と呼ばれる時代の終わり頃です。この頃の古墳は終末期古墳と呼ばれ、古墳時代前期の巨大な前方後円墳から円墳や方墳へと形が変わり、古墳そのものも小さくなりました。

誰の古墳か?

天武天皇の皇子である高市皇子、高官であった百済王昌成、古墳周辺一帯が「阿部山」という地名であることから右大臣の阿部御主人など、いろいろな人物が想像されています。
また、金や銀を使った副葬品や豪華な装飾をほどこしたと推測できる木棺などから、かなり身分の高い人のお墓であったことがわかります。

キトラ古墳内部

古墳内の壁画について

キトラ古墳壁画は、石室内部に塗った漆喰の上に繊細な筆づかいで描かれたものです。本格的な天文図や、四神像の全て、動物の頭と人間の体をもった十二支像などが確認されている、学術上、価値の高い文化財です。

天文図

天井に描かれた天文図は、現存する世界最古の科学的な天文図です。天の赤道や太陽の通り道である黄道が描かれ、大きな呪術的力を持つとされた北斗七星をはじめとする中国式の星座が配置されています。太陽と月も描かれています。

天文図

四神像

青龍図

青龍

天井石の隙間から流れ込んだ泥土によって多くの部分が隠れていますが、2本の角や大きく開いた口、長く描かれた舌と下アゴなどが確認できます。

白虎図

白虎

通常の白虎(高松塚古墳など)とは逆に頭が北を向いています。細身で首が長く、両眼を見開き、前脚を突き出した躍動的な姿です。耳の毛や黒目も細かく描写されています。

朱雀図

朱雀

高松塚古墳では失われていた朱雀像がキトラ古墳には残っています。地を蹴って羽を広げ、今にも飛び立とうとしているような躍動的な姿はたいへん珍しいものです。

玄武図

玄武

玄武像とは亀に蛇が絡まった像のこと。蛇の体には斑点模様が描かれ、亀の甲羅の縁には円模様が描かれています。

獣頭人身十二支像

キトラ古墳壁画の特徴の一つは、動物の頭と人間の体で十二支をあらわした獣頭人身像が描かれていることです。
古代中国では十二支の人形(俑)をおく習慣がありましたが、キトラ古墳の場合はこの人形を壁画として描き、葬られた人の魂を守ったと考えられます。

発見までの経緯

高松塚古墳壁画発見の直後、付近の住民から「近くに似たような古墳がある」と知らされ、これがキトラ古墳の発掘調査に繋がる糸口となりました。 1983(昭和58)年にファイバースコープによる探査が行われ、石槨の奥壁に玄武と思われる壁画を発見。 15年後の1998(平成10)年、上下左右に向きを変えるCCDカメラで探査し、青龍、白虎、天文図を発見しました。そして2001(平成13)年の調査ではデジタルカメラを用いて、南壁の朱雀を確認し、獣頭人身十二支像の存在も確認しました。

古墳保存について

文化庁キトラ壁画保存管理施設

文化庁が2003(平成15)年より石室内調査を開始。その結果、壁画は、そのままにしておいてはやがて崩れてしまう極端なもろさであることがわかったため、この壁画を守るため、2004(平成16)年8月より、日本で初めての本格的な取り外しをおこないました。
取り外した壁画は細心の注意をはらって修理、強化処理をおこない保存管理しています。
古墳そのものは石室と同じ石材でふさぎ、埋め戻しました。
壁画および古墳の研究・保存・公開などは奈良文化財研究所が主となって進めています。
「キトラ古墳壁画体験館四神の館」1階の「キトラ古墳壁画保存管理施設」では、期間限定・事前登録制で壁画実物を公開します。

キトラ古墳と高松塚古墳の比較

キトラ古墳 高松塚古墳
四神像
(朱雀、青龍、玄武、白虎)
白虎が北向き(珍しい) 白虎が南向き(一般的)
天井の絵 星空の様子を精密に描いた「天文図」 星空をデザインした簡略化された「星宿図」
四神像、日月像以外の
東西南北の絵
獣頭人身十二支像 男女群像
内部の天井の形 屋根形 平天井
石室の石材 凝灰岩(二上山産) 凝灰岩(二上山産)
石材の数 18 16

[参考]文化庁ホームページ「高松塚古墳・キトラ古墳」

キトラ古墳壁画体験館 四神の館 ご利用案内

開館時間 9:30~17:00 (12月~2月は9:30~16:30)
休館日 12月29日~1月3日
入館料 無料
アクセス 近鉄壺阪山駅から徒歩12分、近鉄飛鳥駅から徒歩22分、又はバス停「キトラ」
駐車場 あり
所在地 奈良県高市郡明日香村阿部山67
お問い合わせ キトラ古墳壁画体験館 四神の館 0744-54-5105

キトラ古墳壁画の公開は期間限定で行います(事前登録制)

1階文化庁キトラ古墳壁画保存管理施設

03-5253-4111(文化庁文化財部古墳壁画室/文化庁代表)

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